私や私の患者さんたちは、いつもお世話になっているくだものにかけられた無実の罪を晴らそうと、その「事実」を声を大にして話すのですが、なかなか理解してもらえません。ただ「よくなった」というのでは、他の要因が働いたせいとも考えられるし、決定的な証拠にはなりませんから、もっともなことです。どうやったら「証拠」を見つけられるだろう?私はあれこれ考えた末、ある実験を思いつきました。
糖尿病の検査をするとき、ブドウ糖七五グラムを飲んで、それによる血糖の上がり方を見ますが、ブドウ糖の代わりにくだものでやってみたらどうだろうと考えたのです。くだものが肥満、糖尿病の原因になるならば血糖値は上がり、そうでないならば数値は低いはずです。
私は早速、自分を実験台にしてみました。私の患者さんでもあり、行きつけの喫茶店のマスターでもあるHさんにも協力してもらいました。
その結果はシロ。しかし二人の例くらいでは信憑性がありません。また二、三種類ではなく、いろいろなくだもので試してみる必要もあります。
1986年の3月から87年9月にかけて実験がくり返されることになりました。
テストの方法はこうです。まずベースになる血糖値(血液中の糖の量)を測ります。飲まず食わずの状態で血液を採り、血糖値を測定し、すぐにブドウ糖七五グラムを欧んでもらいます。そのまま他のものを口にせず、一時間後、再び採血します。さらに二時間後にもう一度採血をして、この三回の血糖値の変化を調べるのです。
グラフ1.を見てください。ふつうはこの測定値をグラフにして、ラインAより血糖値が低ければ正常、ラインAからBの聞くらいだと境界型、つまり半ば糖尿病になりかかっている、ラインBを超えたら糖尿病だと静断するわけです。
次に実験本番ですが、また別の日にやはり飲まず食わずで血液を採って測り、直後にブドウ糖七五グラム相当の糖分を含む量のくだもの糖度九度のミニトマトなら八三〇グラム、ファーストトマトならMサイズを七個半、糖度十一度の日向夏も七個半、Sサイズの糖度十三度のミカンは十一個とかなりの量になります−を食べます。そして一時間後、二時間後と血糖値を測り、変化を見ます。
糖分量が同じなのだから、同じような数値が出そうなものですが、そうだとするとブドウ糖と同じくらいの弊害があることになるでしょう。また、もっと高い数値なら、それ以上に問題があることになりますが、もし低ければ「くだものを食べると太り、糖尿になる」とはいえないことになります。
三月十四日、ファーストトマト、ミニトマト、イチゴ、日向夏、ネーブル、八月二十一日、パ イナップル、ハウスミカン、九月十九日、ブドウ二種、十月二十一日、紅玉リンゴと早生ミカン、十二月十、十一日、完熟ミカン、翌年九月十日、トウモロコシ……。たくさんの人々がモルモットになってくれて、実験は順調につづきました。
相当な量のくだものを食べなければなりませんから、食べきれずにリタイアする人がたくさ ん出るのではないかと心配していましたが、のべ約五十人のうち、ファーストトマト四個でギブ・アップしてしまった人が一人いただけ。しかもこの人はトマトが苦手というのだから、四個も食べられたことを喜んであげなくてはならないくらいです。これは句の完熟のくだものがとてもおいしかったからでしょう。また何人もの人が「あとでおなかがすっきりした」と言っていました。それに反してブドウ糖の場合は「口の中はず−つとさっぱりしないし、次の日まで胃腸が気持ち悪くて調子が出なかった」という人が多かったようです。
注) 糖度……くだものや野菜の中身の漉さを示す数値。甘さだけの基準ではない。
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