今はまず「くだものは体によいのか悪いのか」という全体的な確認をするのがいちばんの目的です。その点ではとにかく「くだものはマルである」と言い切って差しつかえないでしょう。表1.〜6.を見るとわかるように、インスリンの分泌量も軒並み少なくなっています。かなり個人差がありますが、それだけ体に負担をかけずに、すみやかに分解されているのですから、くだものは二重にプラス作用をしていることがはっきり示されています。もちろん糖尿病、あるいは境界型の人はどうしてもインスリンの活性が衰えているので、その分、インスリンを量的に浪費するわけです。ところが表4.の人など、くだもののときには人並みの消耗度ですんでいます。いろいろな人の血糖値を測っているうちにおもしろい事例にぶつかりました。グラフ14.と表7.がそのデータです。たいへん健康な二十代の女性ですが、彼女の場合はくだものの時の方が、血糖値が高くなっています。しかしこれは例外中の例外。被験者の中でこういう結果が出たのは、唯一人だけでした。
彼女は全員の中でいちばん血糖値が低かったわけですが、これ以上低いと逆に好ましくないでしょう。そういうタイプの人がくだものを食べたときにほどよく血糖値が上がっているのですから、くだものが血糖値を適度に保つ調整機能をもっていると考えてよいのではないでしょうか。くだものは単に血糖値を下げるのではなく、ちょうどよくバランスがとれるように働くといった方が正しいのだということが、この例からわかります。そして血糖値はブ ドウ糖のときより高くても、くだものを食べたときの方がインスリンの分泌量が少ない点は、他の人と共通していますから、血糖値は上がっても体への負担は少なく、彼女にとってもまた、くだものの方がベターだということは明らかです。
また、こんなケースもあります。お母さんが肥満の治療のために食生活を改め、生の果実、生野菜、生魚のウエートを高くしたところ、太ったお母さんがスリムになるにつれて、やせすぎの息子さんは、逆に体重がふえはじめたのです。生きているくだものや野菜は、人間にははかり知れない力を秘めているのでしょう0よく患者さんには私にも予測できない現象が起こります。どんな奇跡が起きるだろう・・・私はそう思いながら「十分自分自身で観察して何かあったら必ずメモしてください」と、いつも、そう一言付け加えているのです。
このような実験はとても素朴なものですが、くだものの無実を示すのに十分な証拠がつかめました。
近代の精密機械で行う方法だと、測定しょうとする物質を単一にしぼり、その他の測定の邪魔になるものはすべて排除してしまいます。たとえば血糖値の測定方法を例にとって考えてみると、基確実験として行うブドウ糖負荷試験は近代的な精密検査といえるでしょう。ブドウ糖という単一の物質だけを取り上げ、他のものは切り捨ててしまうわけです。
しかし、この自然界には単一物質だけからできている食物など存在しません。さまざまな成分−邪魔ものと思える物質も含めて−がいっしよになり、バランスをとっているからこそ、生命の粁になりうるのではないでしょうか。
私は精密検査を破壊的測定法と呼び、くだものを生で食べて計るような方法を非破壊的測定法と呼んでいます。ブドウ糖は生きた食べものを破壊して抽出されたものですが、くだものをそのまま食べれば、その生命を丸ごととりこむということになるからです。たしかに精密検査からは正確なデータが得られるかもしれません。でも、その数字は現実の役には立たないものです。それよりも生きた食物がおよぼすデータの方が、多少数字があいまいでも、はるかに真実をあらわしているといえるでしょう。
とにかくもこの実験のおかげでくだものの無実を示す証拠の一つがつかめました。糖尿病 や肥満の人が毎日くだもの・野菜中心の食生活を、生命ある限りつづけていけば、グラフのように実線から点線へと下がっていくはず・・・。この実験は私の患者さんたちがよくなっていくメカニズムの一端を明らかにしてくれました。
注)インスリン-膵臓に島のように浮かんでいるランゲルハンス島から分泌される大切なホルモン。血糖値を正常にコントロールする働きを持つ。
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